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【注意事項】
・小隊がほぼ全滅したかのような描写があります。
・陸央が、生存してるか不明な仲間を置いていく描写があります。
・悲しい話です。オチはない…
大丈夫そうでしたら先にお進みください。
その結末は誰も知らない
「天帝城が崩落するぞ!急げ!」
地の底から唸りをあげるような低い音と、そこらに響く怒号で俺は目が覚めた。北棟一階のあの部屋で大将たちを見送った後、敵兵たちとやりあって、いつのまにか気を失ってた。目が覚めた時には生き残った李塔天側の奴らが我先にと出口に殺到していて、何事かと思えばそういうことだった。
…俺が見た限り、小隊の隊員に生存者は確認できなかった。正直、分からなかった。倒れてる姿とか、崩れかけた柱の影に黒い隊服が見えたりは、した。生きているなら、どうにか助けたかった。でも力もほとんど出せない今の俺にはどうすることもできなくて。ごめん、ごめん、ごめん、って思いながら、誰か一人でも先に逃げてるよな…逃げててくれよなって思いながら、フラフラした足でひとり出口に向かった。
謀反人とされてる捲簾大将たちに味方した人間だとか、そういう事はもうこの際関係がないようで、アッチ側の人間が俺の隊服を見ても危害を加えられたりする事はなかった。もうそれどころじゃなかった。
後ろから俺を追い越して走り去ってく奴らの中に、誰か紛れていないだろうか。俺と同じ隊服が。黒い隊服が。紛れててくれ、頼むから。
身体が、重い。痛い。このままじゃ意識もやばい。ふいにぶつかられてフラついた俺は、よろよろとそこら辺の瓦礫に勢いよく倒れ込んでしまって、そこからまた意識を失った。
頬がくすぐったい感じがした。風だ。それから少し眩しいのと、背中にもの凄く重い何かがのし掛かってる事だけはなんとなく分かった。
生きてたんだ。
だいぶ時間がかかって瓦礫から這い出した。辺りを見回した。変わり果てた天帝城。ひとひらも残さずに散った桜。記憶の中のものは何一つ無くなっていた。俺はハッとして、人影を探した。誰か、誰か。小隊の誰かはいないのか。体重を乗せると今にも崩れそうな、城の残骸。それに埋め尽くされたそこら中を歩き回った。時々目に飛び込んでくる腕だとか足だとかにいちいち心臓が強く鳴った。見られる所は、全部見た。
「おい…」
呼び掛けたくて絞り出した声。なんでこんな情けない声しか出ないんだよ。
「おい……おぉ───い…!」
立ってられなくなって、膝をついた。
「おいってば……!」
なんで、なんで。なんで俺だけなの。嘘だろ。どっかにいるんだろ。ちょっと待ってよ、俺たち第一小隊だろ。そんなもんかよ。大将たちに加勢しようって決めた時、覚悟してたよ、してたけど、でも、自分だけ生き残るなんてそれは違うだろ。そんなんじゃねぇよ。そんな覚悟したんじゃねぇよ。
なんで俺だけなの、なんで。
…大将と元帥は。無事だよな。強ぇもん。俺らの上司だぞ。負けるわけない。そうだ、時空ゲートだ。下界であの4人を捜索するために、アッチ側の奴らは真っ先にゲートを修復するはずだ…よし、俺が先に探し出してやる。それで、大将たちに、今度は前よりいいとこの焼肉お願いしてやるんだ…
大将。元帥。探してみせますから、必ず…
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