【詳細】

・診断メーカーさんのお題で、

「拝啓、愛しい人。どうしていますか」で始まり「きっと大丈夫だって、今なら言える」で終わる

というものを使わせていただきました。

・卒業後同棲設定。ケイトが出ていった設定です。

・お題に沿って書きたいところだけ書いたのですごく短いです。

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​大丈夫でしたらどうぞ！

 

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だって塗りつぶせなかったから

 

　拝啓、愛しいひと。どうしていますか。仕事は忙しいですか。朝はひとりで起きれてますか。オレの荷物はぜんぶ捨ててくれましたか。
　ひとりはとてもよかったよ。身軽で、背負うものがない。その日にしたいことをその時に考えて、好きなものを食べて好きな時間に寝る。後先は考えても、自分以外に気をつかったりしなくてよくて。
　だけどオレは今、おまえの住む部屋に向かって歩いてる。何ヶ月か前までオレとおまえが住んでた何もなくて退屈な街の、レンガの壁と白い窓枠のあのアパート。駅から少し歩くけど、その時間が実はけっこう好きだった。
　おまえがくれるものを抱えきれなくなった。あの時のオレは、どうしようもなかった。ねぇ、あんなひどいこと言ったのに、なんで笑ってたの。勝手なこと言うなとか、もっと怒ってくれてよかった。わかったよ、なんて笑って、そんな物分かりのいいフリしないでよかったんだよ。
　だから最後に見たおまえの顔が忘れられなくて、正直困ったよ。夢にまで出てくるぐらいだったら、ちゃんとオレを傷つけてくれればよかった。お互いが完全に過去の人間になるぐらい、めちゃくちゃに。そうすれば、こうしてここに来ることもなかったんだよ。
　こうやってオレはこの期に及んでまだおまえのせいにばかりしてる。おかしいね。
　相変わらずギシギシいう階段。部屋の電気はついてない。ポスト、いらないチラシでいっぱいじゃん。家をあけてるんなら、それはそれで。待ったりはしないよ。きっともうここには来ない。これで、終わり。
　いる？　いない？　あぁ、心臓がうるさい。鍵を開けるのはなんとなく違う気がして、チャイムを鳴らした。指が、震えた。
　電気がつく。喉がしまる。うまく話せるか、わからない。
　怒ってもいい。泣いてもいい。なんで来たんだって、追い返してくれてもいい。
　でももし、オレの勝手が許されるんなら。あの頃みたいにおまえがくれたものを、今度はオレも返せるんじゃないかって何の根拠もなく思うんだ。
　きっと大丈夫だって、今なら言える。

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